5月に藤井聡太プロが7段昇段し、つい先日も中村亮介7段を相手に昇段後の初勝利を挙げましたね。
並みいるトッププロたちをなぎ倒し、飛ぶ鳥を落とす勢いで快進撃を続けるさまが、当たり前のようになってしまいました。
今日は、最も旬な棋士である藤井7段の棋風・棋歴(プロ入りまで)を振り返っていきたいと思います。
藤井聡太7段
(写真出典:日本将棋連盟)
生年月日:2002年7月19日
出身地 :愛知県瀬戸市
棋士番号:307
目次
棋風
切れ味のある終盤力を支える中盤力
「序盤・中盤・終盤、スキがないと思うよ」
佐藤(紳)7段が豊島8段を評したフレーズですが、藤井7段にも同じことが言えます。
詰将棋の能力が取りざたされますが、総合的に弱点が見当たりません。
序盤に繰り出される軽快な攻め
対応力があって腰の重い中盤力
接戦を見切る終盤力
しかし、僕が注目するのはその中盤力です。
中盤で優勢を気づき、終盤でそのまま踏み込んで一手勝ちを目指すのが勝ちパターンだと感じています。
(※藤井7段の将棋は「将棋DB2」で検索できます。どうぞご覧ください。)
なお、チェスにもこんな格言があります。
“Play the opening like a book, the middle game like a magician, and the endgame like a machine”
Rudolf Spielmann (1883-1942)
「序盤は本のように、中盤は魔術師のように、終盤は機械のように」。
まさしく藤井7段に当てはまると思います。
藤井将棋の特徴は角・桂の使い方
7段昇段戦では、後手番ながら中盤で大差で優勢となり、対局相手の船江6段に指す手がなくなってしまいました。
早めに筋違い角を打ったのが印象的な将棋でしたね。
また、日頃から桂馬の使い方についても話題になっています。
角換わりの、いわゆる「桂ポン」を指しこなしているのはもちろんですが、一番有名なのは「44桂」を打った広瀬8段との将棋でしょう。
中村王座がうなりながら解説していたのが印象に残っています。
角と桂馬の共通点は、扱いづらさはあるが、攻めがつながるとなかなか振り払うことができないこと。
斜めのベクトルから強力な攻めが来ると、飛車や金銀などの駒ではなかなか対応できないのです。
棋歴
幼少期~奨励会入会まで
2007年夏、5歳で将棋のルールを祖父母から教わります。
プロ棋士の方々は小学校入学前後で覚える方が多いイメージです。(豊島先生は3歳で始めたそうです。)
5歳の藤井少年は読み書きがあまりできなかった藤井少年。
将棋の符号を頼りに所司先生の『駒落ち定跡』を読破しました。
読破後はふみもと将棋教室に通います。
受講する子どもの数も減り、まさに教室をたたもうとしていた席主の文本さん。
一目で藤井少年のポテンシャルを見抜き、「この子を育てたい」と、教室を継続することにしました。
ここで教室に入っていなかったら。文本さんが教室を畳んでしまっていたら。
今の藤井7段はいなかったかもしれません。
その後、将棋大会に参加するようになり、地元で頭角を現します。
藤井少年があまりにも強く、彼を敬遠して別の地区の大会に出る子どももいました。
藤井先生の2歳上である私の知人などは、
「奨励会に入りたかったが、年下の藤井君に勝てないのであればプロにはなれないと思った」
と、奨励会試験を断念した方がいます。
いまや、彼も平気で県代表を取っている実力者でもあるのですが……。
幼少期から、藤井少年は周囲に影響を与えてきたようです。
その後、2010年に東海研修会入会。
2011年には全国小学生倉敷王将戦 低学年の部で優勝。
2012年には研修会B1に昇級、もって奨励会に6級で入会を果たします。(小学4年:10歳)
師匠の杉本昌隆7段も、「この子をプロにしなければ、師匠失格」と思っていたようで、
そのときの内容も本で回想しています。
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奨励会~プロ入りまで
奨励会の昇段年月日とその際の年齢を図にしました。
級位・段位 | 昇級・昇段年月日 | 年齢 |
6級 | – | |
5級 | 2012年9月22日 | 10歳2か月 |
4級 | 2012年11月10日 | 10歳3か月 |
3級 | 2013年6月3日 | 10歳10か月 |
2級 | 2013年9月15日 | 11歳1か月 |
1級 | 2014年3月17日 | 11歳7か月 |
初段 | 2014年6月21日 | 11歳11か月 |
2段 | 2015年2月28日 | 12歳6か月 |
3段 | 2015年10月18日 | 13歳2か月 |
4段 | 2016年10月1日 | 14歳2か月 |
一つの区切りである「入品(初段昇段の意)」が11歳11か月で、驚くべきスピードです。
個人的には15歳までに入品、18歳までに3段昇段を果たせば、4段昇段(=プロ入り)はかなり有望だと思います。
藤井少年は入品後もじわじわと勝ち星を重ね、いよいよ3段昇段、3段リーグに編入します。
ここから昇段し、プロになれるのは、原則として半年に2人。
3段リーグには常時30人前後が所属しており、昇段できるのはほんの一握りの厳しい世界です。
3段リーグ1期抜け、最年少プロへ
元奨の知人が言うには、4段昇段の1年前から、終盤を中心に突然強くなったとのこと。
「鬼の住処」「地獄」ともいわれる3段リーグもたった1期で抜けてしまいます。
〇第59回奨励会3段リーグ戦
別の元奨の知人は、次のように言っています。
「『意地でも藤井を1期で上がらせるわけにはいかない。3段リーグの厳しさを教えてやる』という空気が周りに漂っていたことは間違いないし、それを本人は感じていただろう。
その中で本当に抜けてしまうのは信じられない」
かくして、将棋界に若きニュースターが誕生したのでした。
そのあとも目覚ましい活躍をしているのは、皆さんご承知のとおりです。
プロ入り後の活躍は次回の記事に続きます。
【藤井聡太】【徹底解説】 藤井聡太七段を多角的に考察する(2)
関連棋書
藤井少年の最初の1冊。 所司先生の著書で、私も子どもに教えるときに重宝しています。
「師匠」という立場から藤井聡太7段を綴った1冊。
表紙に惹かれますが、内容も読みやすく、藤井入門としてはこの1冊で大丈夫!
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