深浦康市 九段 vs 羽生善治 竜王 第77期順位戦A級2回戦
仲間に恵まれ、高校時代に全国大会団体戦で優勝経験があります。
将棋の普及にも興味があり、子ども将棋教室を何度も開催。
駒の動かし方から教えるほか、指導対局を実施。延べ250人以上を指導しています。
また、これまで海外20か国以上を訪問。滞在先で将棋の普及やチェスの対局を楽しんでいます。
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昨日の順位戦(深浦ー羽生戦)の感想です。棋譜
最後まで勝負の行方が分からない激闘で、面白かったですね。
先日の丸山ー久保戦(JT杯)から初段前後の方に向けた解説を心がけていますので、ご了承よろしくお願いします。
目次
相掛かりの流行形へ(10手目:52玉)
本局は相掛かりの流行形(68玉型 対 52玉型)となりました。
相掛かりは序盤から手将棋になりやすいので、居飛車後手としては有力な戦法だと思います。
増田ー藤井戦(abema)でも述べましたが、僕は相掛かりの知識が比較的乏しいので、知っている範囲で解説したいと思います。
玉の位置について簡単に説明すると、先手の68玉型のメリットは、58玉型よりも2~4筋の反動が少ないこと。デメリットは7筋からの攻めに弱いことです。
バランスを取る将棋というよりも、将来の攻めに期待した玉の位置と言えます。横歩取り勇気流と似たような発想ですね。
後手の52玉形は、もちろんバランス重視。玉を含めた全体の駒を使い、少ない手数でバランスを取って、軽い形を築いています。デメリットは玉頭の5筋が薄いことになります。
桂馬が負担に(22手目:74歩)
角交換後に、後手は74歩。ここで74歩に代え、2筋を受けるために33銀と指したいのですが、24歩~25歩や66角で先攻される筋が気になります。45桂の際に33の銀に当たる変化も読まなくてはなりません。
かえって相手の攻めを早める危険性があるわけですね。
2筋の歩交換を許しても、すぐすぐ悪くなるわけではありません。
がっちり受けるとお手伝いになる可能性があるので、とにかく「軽く」指し回したいところです。
そういった意味では、桂馬を73に跳ねる余地を作った本譜74歩は理に叶った手と言えるでしょう。
この「軽さ」を念頭に置いて、この記事を読むことをおススメします!
後手が先攻(28手目:35歩)
先手は66に角を打ちますが、75歩同角54飛が「手筋」ともいえる手順。54の飛は非常に安定した好位置で、この形で頻出です。
本譜は35歩と桂頭を攻め、26飛73桂と進みます。
「攻めは飛角銀桂」という格言がありますが、後手の攻めは僅かに「飛桂歩」。何度も言いますが、軽く融通性のある形ですね。
受けの呼吸(47手目:87銀)
後手は馬を作るのですが、深浦9段は47手目に87銀!と懐を広げました。
この類の手の意味としては「あなたから急ぐ手はないでしょう。じゃあ私も攻め急ぐ必要はないから、自陣に手を入れますね」ということです。
この手で79~88の玉の逃走ルートが確保されたので、反動を恐れずによりアグレッシブな攻めをすることができました。
私見ですが、アマ初段なら基本的かつ直線的な攻守が理解でき、2~3段ならその読みがさらに洗練されるイメージ。4段以上は、曲線的とも言える「間合いを図る実戦手」を意識する必要があるでしょう。
ただ、この類の様子を見るような手は、下手をするとただの緩手・一手パスになりかねません。なかなかレベルの高い呼吸法だと思います。
玉の追い込み方(112手目:34歩)
やや飛んで、この後先手が攻め続ける展開になりますが、羽生竜王の柔軟な対応に攻めを間違えたこともあり、二転三転。図は34歩と打ったところですが、ここで54金! と柔らかく受けます。
まだ先手が有利だったようですが、持駒がなく、既に深夜。
お互いに1分将棋の展開で、先手は正着手を見つけることができませんでした。
なお、abemaで戸辺先生が解説していたのですが、34歩に代えて33歩!!なら先手勝勢だったように思います。
ここで54金と指しても、32歩成~33桂成となり、解くことはできないでしょう。
しかしながら、これは深夜の1分将棋。指運が勝敗を分けたとしか言えないと思います。
美しい終局図(127手目:58同金への応手)
いよいよ局面はクライマックス。
58と同金と指したところですが、なんと58同竜!から詰みがあります。以下同玉に36角と指せば、いい合駒がなく、ぴったり追い詰めになってしまいます。
これが投了図。94の飛車や36の角が使えるので、詰んでしまいます。
58同竜以下の詰みは変化が多いので、ぜひ盤に並べて考えてみることをおすすめします。
64の香まで働いて詰む筋もあり、まさしく盤上全体に激戦の様子が窺える終局図と言えるでしょう。
村)A級順位戦の深浦九段ー羽生竜王戦、熱戦とあって感想戦にも力が入りました。深浦九段が勝ちを逃したことが確認され、羽生竜王は「これは負けだと思います」。深浦九段は無念そうな表情でした。対局を終えた杉本七段も感想戦を見ていました。 pic.twitter.com/77MlTNEle7
— 朝日新聞将棋取材班 (@asahi_shogi) 2018年8月8日
これで羽生竜王は順位戦1-1、深浦9段は0-2となりました。
両者とも調子が悪いわけではないと思うので、今後も順位戦は激戦が繰り広げられることと思います。
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