観る将から指す将まで

【藤井聡太】【レビュー】 藤井聡太7段のロングインタビュー「隘路を抜けて」を読んで

2018/07/05
 





将棋世界7月号に、藤井7段のロングインタビューが掲載されました。
というわけで「光速の寄せ」さながら書店に直行。

いやはや 「隘路」なんて単語は生まれて初めて聞きました。
日本語学者や辞書編纂関係の方ならわかるのでしょうか。

ただ、タイトルの「隘路を抜けて」はインタビューの趣旨や内容にそぐわない気がします。
藤井語録を前面に出したかったのでしょうが、そこは残念でした。

インタビューを読んで、僕自身の勉強方針に自信がつきましたし、同時に藤井将棋の本質に触れられたと思います。
著作権に配慮しながら、僕が感じた藤井先生の強さについて述べていきたいと思います。

 



藤井将棋の強さの秘訣

 

驚異的な適応力・軌道修正力

 

端的に「慣れる」ということなのですが、自分の強さの軸を保ったままスタイルを変化させることができるのは驚くべきことです。

大抵、自分の弱さと強さは一体になっています。
弱点を消そうと思って簡単に消せるものでもないですし、また別の弱点が生まれるものです。
スタイルチェンジして、長所が消えてしまうこともあります。

通常はスランプに陥り、適応する必要を強いられて変化することが多いです。
それにも関わらず、高勝率の中で軌道修正が行えるというのは驚くべきことです。

前回の記事で、「4段昇段の1年前から急に強くなった」という証言を書きましたが、藤井将棋はプロ入り後も深みを増しています。
例えるなら、今まで中・終盤の剛速球がプロの世界で十分通用していた中で、中盤に剃刀のようなスローカーブを投げてきて、いきなり緩急にも強さが出てきたようなものです。

また、インタビューの終わり際に、藤井7段はある駒を使うのが苦手だと語っています。
しかし、直前に古森4段相手の快心譜を挙げており、その駒を見事に使いこなしています。
(この将棋はリアルタイムで見ていたのですが、僕の理解をはるかに超えていました。)

強さを保ったまま弱点を補える能力
それは大きな武器になります。

 

飽くなき探究心

 

羽生先生にも共通すると思うのですが、段位や勝敗には全くこだわっていない印象を受けます。
結果は内容に付随するものであり、自分が内容に満足できることが大事。
満足するためにますます強くならなければ、とのひたむきさを感じました。

将棋は「追究する対象」であり、商売のツールではない。そのように捉えているからこそ、プロ入り後もプレッシャーに潰されることなく29連勝の快挙を打ち立てることができたのでしょう。
インタビューからは邪心のようなものは一切伝わってきませんでした。
むしろ、プレッシャーを受けていたのは対局相手のプロ棋士のほうだったと思います。

 

客観性

 

インタビューの全体通じて、客観的な人柄がにじみ出て、自己分析されています。
うまく言えないのですが、藤井聡太7段が「藤井聡太7段」を語っているような印象を受け、藤井7段の型は「藤井聡太」という人間そのものなのではないか、と思いました。
僕が藤井7段の将棋を見ていても、「藤井流」という手はあまりないような気がします。

気づいたら理に叶った手を指している。
いつの間にか強いマスに強い駒がいる。
ただ本筋を指している。
ただ強い。

そのような形のない型や、客観性から繰り出される卓越した構想力が強さの秘訣なのだと感じました。




ピークを迎えてから真価が問われる

 

恐らく藤井先生は、これからもしばらく快進撃を続けていかれると思います。
しかしながら去年、高校進学をするか選択した頃のインタビューで、流動性知能(思考力や計算力を指す知能のことで、18歳~25歳がピーク)について気にしていらっしゃいます。

そのようなピークを迎えた際に、藤井将棋は変化が求められるのではないか、と思います。
これまでスランプというスランプを経験していない藤井7段。私の予想では、二十歳前後に一旦勝率を落とすものの、そのスランプを克服してさらに成長するのではないかと予想しています。

今後も藤井7段から全く目が離せませんね。

 

蛇足

 

今月の「将棋世界」は密度が濃かったように思います。
インタビューの他に、青野流横歩取りのボリュームも大きかったですし、「イメージと読みの将棋感」、女流棋戦関係の記事、付録の4段昇段記特集も読みごたえがありました。
将棋ファンの方はぜひ購入をご一考ください。

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