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【順位戦】稲葉 陽 八段 vs 久保利明 王将 第77期順位戦A級2回戦

2018/07/21
 
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つわぶき
バランス重視の振り飛車党。最高R2511。
仲間に恵まれ、高校時代に全国大会団体戦で優勝経験があります。

将棋の普及にも興味があり、子ども将棋教室を何度も開催。
駒の動かし方から教えるほか、指導対局を実施。延べ250人以上を指導しています。

また、これまで海外20か国以上を訪問。滞在先で将棋の普及やチェスの対局を楽しんでいます。

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A級順位戦・稲葉ー久保戦のハイライトです。(将棋DBの棋譜はこちら

僕は稲葉8段が奨励会直前の小学生時代に対局経験があるのですが、いいところなく負けてしまい、その実力の差に悔しがることもできませんでした。
稲葉先生は、当時からアマ6段近い実力があったと思います。

本局は僕もよく指す後手オープン四間でしたので、勉強も兼ねて振り返ってみたいと思います。
居飛車党の方もぜひご覧ください!

互いに自陣整備(16手目:72銀)


本局はオープン四間。先手の25歩に対し、44歩を突かずに33角と受けます。

オープン四間の長所は駒組の段階で手損しないところ。自分から角交換することもありませんしね。
短所は展開によっては早々と決めた左桂を咎められる危険性があること。

どの戦型にしてもそうですが、後手は先手に比べて1手遅くなる分、その戦法は何らかのデメリットを孕んでいると考えたほうがいいです。
そのデメリットをいかに展開の中で解消していくか。
そこに後手番の戦法の面白さや難しさ、ひいては美学が存在すると考えています。

前置きが長くなりましたが、本譜は16手目に72銀で片美濃が構築できました。
ここで気になる24歩は、同歩同飛22飛。続く23歩21飛22角には、
(1)44角でもいいし、
(2)32金31角成同金22銀35角!28飛26歩でも後手互角以上。

この辺りの僕の基本構想はすでに記事にしていますので、未読の方・忘れた方はぜひご覧ください。
[関連記事]【★×4】つわぶき流 オープン四間の基本方針

 

角で後手の左辺を牽制(19手目:77角)

72銀から本譜は88玉22飛77角と進みます。

22飛は手堅い32金もあるところで、32金~41飛~42銀が基本構想。
先手が飛車先交換してくれば22銀も視野に入れています。

一方、本譜の22飛は左辺の駒組みを決めておらず、軽い形。
棋風に応じて選べばいいでしょう。

しかし22飛を指すプレイヤーは本譜の77角対策をしなければいけません。
角の力によって左辺をくぎ付けにして、右銀を繰り出して後手の桂馬をいじめる構想です。
先手の角の打ち場所は、玉の逃げ道を邪魔しない「77」がいいでしょう。

この角によって後手は4筋が突けなくなったので、代わりに5筋を突くことになります。

 

桂頭に照準を合わせる(35手目:38飛)

先ほどの解説どおり、先手は桂頭に狙いを定めます。
局面は互角ですが、後手は駒組みに制約を受けているのがわかると思います。

アマチュア的には、狙いのはっきりした先手を持つ人が多いのではないでしょうか。




玉頭戦へ(45手目:85歩)

数手進み、玉頭戦になりました。

相変わらず左辺はくぎ付けで囲いもバラバラですが、玉頭は後手も強いところ。
勝ちにくい形ながら、後手も十分やれています。

ここで本譜は29馬だったのですが、僕ならこの局面で実戦的な86香から考えてみたいです。
一例は79玉89香成同玉85桂86歩77桂打同銀同桂不成同角29馬。

こうなると後手からの75歩が厳しく、後手有利だと思います。

本譜は85歩に29馬84歩72銀75歩同歩74歩65桂35飛!と進み、先手の飛車が横にも使えてきました。

 

打ちたいところに(61手目:85桂)

先手は後手の左桂を取り、空いた85のマスへ。
後手からの玉頭攻めもなくなり、制空権を完全に得ることができました。

後手としてはどこかで85香 or 86香と打っておきたかった印象です。

 

切れない攻め(89手目:64歩)

後手は何とか角・金を取りますが、先手も手厚い攻守を見せつけます。
89手目、65の歩を64に進めた一手が、(1)72銀以下の詰めろをかけ、(2)飛車の横利きを通し、6筋の攻めを切れなくする、一石三鳥の快心の一手。

後手はこれをほどくことができません。以下、いくばくもなく投了図となりました。

<投了図>

以下、22玉に32金打12玉21金で必至。
一方の先手玉は安泰です。

後手の飛車が21に残ったままで、課題が残るやりきれない敗戦でしょう。
77角が後手オープン四間に対する強力な構想だということがお分かりいただけると思います。

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